壽屋寿香蔵の包装紙(紅花絵巻)について
壽屋寿香蔵で使用しています包装紙は、紅花絵巻の一部をあしらっています。
この紅花絵巻は、山形県東根市神町の武田家に伝わるもので、現在は武田家十代目当主・武田陽氏が所蔵しています。この武田陽氏は、壽屋寿香蔵女将の横尾昭の実兄です。
紅花絵巻は、現在の東根市六田生まれの狩野派の画家青山永耕(1817~79)が描いたという説が現在のところ有力なようです。
江戸時代、山形県村山盆地は、近江商人によってもたらされた紅花の栽培が非常に盛んで、栽培された紅花は、染料などとして最上川舟運によって、京の都に運ばれ、村山盆地に巨額の富をもたらしたといわれています(このため、村山盆地には多くのお雛様が運ばれてきたという話はよく知られるところです)。この紅花の栽培から収穫、加工、荷積みまでの工程を絵画にしたものが、紅花絵巻です。
幅40cm長さ7.5mの大作で、紅花絵巻としては、全国唯一のものとされています。
紅花絵巻には、紅花栽培の方法と、加工工程、また当時の農民の生活ぶりがいきいきと描かれています。壽屋寿香蔵包装紙使用の部分を中心に、ごらんいただきましょう。
- (1)花摘み
- 畑に入ってひとつひとつの紅花を摘み取っています。紅花はトゲがある植物なので、早朝朝つゆにぬれて柔らかいうちに、手甲(手袋)をつけて作業を行っています。(現在は花摘みは7月中旬ごろ)
- (2)花寝せ
- 摘み取った花は、川の水で洗い、たらいに入れて素足で踏みつける「花揉み」という作業を経て、「花寝せ」という行程に入ります。これは、風通しのよい小屋に花を並べて、水を数回かけながら、1日~2日程度放置しておく作業です。この間、何度も花をひっくり返して、次第に発酵させていきます。そうすることによって、花はより赤みを増してくるそうです。
- (3)花練り
- 発酵した花を桶に入れて手でこねて、粘りが出てきたら団子状に丸めて、「花餅」を作ります。臼と杵を使ってこねる場合もあったようです。
- (4)花並べ
- 団子状に丸めた花餅を莚(むしろ・・ワラで編んだ敷物)の上に並べる作業が「花並べ」です。赤ちゃんを連れて花並べをする母親の姿が描かれています。
- (5)花踏み
- 花餅を並べ終わったら、その上からもう一枚莚(むしろ)を被せて足で平均に踏みつけてせんべい状にする作業です。
- (6)花干し
- 2枚重ねの莚(むしろ)を2人で持って裏返しにし、莚に張り付いてしまわないように細い棒を持ってたたきながら花餅をはがし、この後、せんべい状になった花餅をまんべんなく天日干しにする作業です。 急な天候悪化のために、あわてて取り込みをして、地面にこぼしてしまっている様子などが描かれています。
- (7)花餅袋詰、荷造り
- 乾燥した花餅を袋詰めにして、荷造りをする作業です。お屋敷の中で行われていて、近くでは、そろばんをはじいたりしながら商談をしている姿が描かれています。秤(はかり)や帳面のようなものも描かれています。
- (8)荷積み
- 梱包された荷物を運んできた馬の背から下ろし、船に積み込む様子です。この船着場から船で最上川を経て日本海へ出て、京の都へと運ばれたと考えられています。
江戸時代の活気あふれる農村へひとときタイムスリップ気分を味わっていただけたでしょうか?
参考文献
東北芸術工科大学東北文化研究センター 菊地和博氏著「紅花絵巻を読む」
神町のむかし~開村から維新まで~
参考解説
紅花絵巻所蔵者 武田陽氏